学習会報告:「未来をつなぐ家族のカタチ」#
2025年2月17日にグランベール岐山にて学習会「未来をつなぐ家族のカタチ ~親なきあとをみんなで考える~」を開催しました。障害のある方の親を中心に、約50名の方が参加し、「親なきあと」というテーマについて共に考える時間となりました。講師には、佛教大学の田中智子教授をお招きし、親の高齢化とケアの社会化について、現状や課題を交えながら講演をしていただきました。
「親なきあと」をどう考えるか#
「親なきあと」という言葉は、多くの親にとって避けては通れないものです。しかし、いざ考えようとすると、その漠然とした大きさに圧倒され、どう向き合えばよいのかわからなくなることも少なくありません。今回の学習会では、田中先生の講演を通して、単に「親の死後の問題」としてではなく、「今からどう準備し、どんな選択肢を増やしていくか」という視点で考えることの大切さを学びました。
田中先生は、「親なきあと」という問題を、親自身の歩みや選択の積み重ねの先にあるものとして捉えることを提案されました。つまり、親の人生の中でどのように子どもの暮らしを整え、どんな形で支援を社会に委ねていくのかを考えていくことが、「親なきあと」の準備になるということです。この視点を持つことで、「親がいなくなったらどうするか」ではなく、「親がいるうちに、どんな未来を作っていけるか」という前向きな方向へと考えを進めることができます。
また、親の役割とケアのあり方についても、改めて問い直す機会となりました。「子どものケアを担うのは親の責任」という考えが根強く残る一方で、親自身も年を重ね、老いと向き合うことになります。その中で、「親もまた老いる権利がある」という言葉が、参加者にとって印象的だったようです。「子どもが大事なのは当然。でも、親自身の生活や健康、人生も大切にしてよいのだ」という視点は、多くの方にとって新たな気づきとなりました。
ケアの社会化と家族の役割#
講演では、「ケアを社会にどう広げていくか」についても話がありました。日本では、まだまだ「ケアは家族が担うもの」という考え方が強く、特に母親にその負担が集中しがちです。しかし、ケアを家族だけで抱え込むのではなく、社会の仕組みとして整えていくことが必要です。親が元気なうちに、どのような支援が利用できるのか、どんな選択肢があるのかを知り、少しずつ社会とのつながりを作っていくことが重要だと話されました。
また、「親なきあと」を考える際には、本人の意思をどう尊重するかという視点も欠かせません。親がいない未来をどう準備するかという議論の中で、つい「親の目線」で最適な選択肢を考えがちですが、大切なのは「本人がどう生きていきたいか」ということ。そのためには、日頃から本人の思いを聞き、少しずつ「親がすべて決めるのではなく、本人と一緒に考える」姿勢が求められます。
参加者の気づきと今後に向けて#
学習会の最後には、参加者同士で意見を交わす時間も設けられました。「理想と現実の間でどう折り合いをつけるのか」「親が担う部分と、社会が担う部分の境界をどこで引くのか」といった悩みが多く聞かれました。一方で、「親がいなくなった後のことばかりを考えて不安になるのではなく、今できることを少しずつ積み重ねていくことが大切だと気づいた」という前向きな声もありました。
今回の学習会では、「暮らしの場の選択肢を増やすこと」「ケアの社会化を進めること」「本人の意思を尊重すること」など、具体的な課題が見えてきました。これからも、こうした学びの場を通じて、私たち自身が「親なきあと」に向けた準備を進め、安心して暮らせる社会を作っていきたいと思います。