学習会報告:「親なきあとを考える」——エンディングノートが照らす未来#
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■ 調査と講演で「親なきあと」の今を知る
8月29日(木)、北部コミュニティセンター防災会議室にて、「親なきあとを考える」と題した学習会が開催されました。講師には、中部学院大学人間福祉学科の兼松博之氏をお招きし、障害のある子をもつ親の意識と、福祉事業所の現状についてご講演いただきました。兼松氏は、いぶき福祉会が取り組むエンディングノートプロジェクトにも参加しており、今回の講演では2023年度に行った意識・ニーズ調査の結果をもとに、「親なきあと」の課題と展望について語ってくださいました。
■ 不安と向き合う親たちの声
調査対象となったのは、知的障がいのある子をもつ親330名と、岐阜市内の障害福祉サービス事業所400ヶ所。そのうち100名の親、96の事業所から回答がありました。
親たちが抱える心配ごとは多岐にわたり、とくに20〜30代の子を持つ母親が「親なきあと」に強い関心を示していることが分かりました。「安心して住める場所を確保できるか」「適切な支援が続くのか」「兄弟姉妹との関係性」など、将来に対する不安は年齢や家庭の状況によって異なりながらも共通しています。一方で、何をどう準備してよいのか分からず、立ち止まってしまう親たちも多くいることが明らかになりました。
■ エンディングノートは“今”を見つめる道具
エンディングノートに関しては、親の半数以上が「知っている」と回答し、「書いてみたい」と考える親も7割近くにのぼりました。しかし、「ペンが止まってしまった」「涙が出てきた」という声もあり、書くことが親の感情に大きく関わっていることがわかります。情報整理のツールとしてだけでなく、わが子の将来を思う時間としてエンディングノートが位置づけられていることがうかがえました。
■ 支援の現場にも広がる関心と課題
一方で、事業所側への調査では、親なきあとの相談を受けたことがあるという回答が7割近くに達しており、「住まいの確保」「生活費」など、親と同様の不安が現場にも寄せられていることが分かりました。エンディングノートについては、実際に取り組んだことがある事業所は15.2%にとどまりながらも、半数以上が関心を持ち、「取り組んでみたい」と答えています。業務多忙や人手不足、高齢化などの課題がありながらも、学びや連携の機会を求めている声も多く寄せられていました。
■ 書くことを支えること、それが支援のきっかけに
講演の最後に兼松氏は、「エンディングノートは未来の準備だけでなく、“今”を生きることを支える取り組みである」と述べました。完成させることを目的とするのではなく、「書くこと」に寄り添う支援が重要であること。そして、画一的な支援に陥ることなく、一人ひとりの価値観に沿った支援のあり方が求められることが強調されました。